日本酒物語:雨後の月(心までとろけるにごり梅酒)

甘い酒

夕食の支度をしていたら、ふと甘いものが欲しくなった。

目に入ったのは、広島・宮島の小さな家族経営のような酒屋さんで勧めてもらった
「雨後の月」のにごり梅酒。

おやつを食べるほどではないけれど、
「ちょうどいいかも」と、夕食前にひとりでちょろっと一杯。

これがね、けっこう幸せなのよね〜。

にごり酒なので、軽く瓶を振ってからグラスに注ぐ。
とろりとした果肉感。濁りがそのまま入った、まるごとの梅の存在感。

口に含むと、無濾過の濃厚さと、どこか澄んだ甘さが絶妙に混ざり合って…
「これぞ、梅の味だなぁ」と、思わずつぶやいてしまう。

ああ、いい気分♡

うっとり猫

なぜか、ピーチネクターを思い出した。あれって、まだあるのかな。
学生時代に感じた、何もかもを包み込んでくれるようなやさしい甘さ。
そしてそれが大好きだった友達の、笑顔。

そうだね、この梅酒は、あの頃のピーチネクターのようにやさしくて、
でももう少し繊細で、大人の味。

さらに思い出したのは、小さい頃に実家で毎年漬けていた梅酒のこと。
「雨後の月」のような高級な梅でもなかったし、純米酒で漬けたわけでもない。
それなのに、あふれる懐かしさ。祖母の笑顔、母の笑顔。

……小学生が梅酒の味を知っているのかって?
それは、私がお酒とは知らず、梅の実を食べちゃったから。
甘くて美味しくて、2〜3個ぺろりと。

梅酒

真っ赤な顔でヘラヘラ笑う私を見て、今ではもう会うことのできない母と祖母が
「熱でもあるの!?」と慌てて駆け寄ってきたのを覚えてる。

なんだか、切なくて、ちょっと泣けてきてしまう。
五感って、ほんとうに不思議。
たった一口で、その頃の空気や音や光まで思い出せてしまうんだから。
まるで感覚ごと再生できるビデオみたいに。

この味は、懐かしさの味。
友達の味。家族の味。子ども時代のやさしい記憶の味。
「よし、今日の私も偉かった。また明日もがんばろう〜」と思わせてくれる、元気の出る味。

こんな梅酒をつくってくれた相原酒造さん、
丁寧なお仕事、本当にありがとうございます。
そして、この梅酒を勧めてくれたあの酒屋さんにも、心から感謝を。

「食のプロフェッショナル」って、きっとこういう人たちのことを言うんだろうなぁ。

相原酒造さんについてちょっと調べてみました

「雨後の月」をつくる相原酒造さんは、1875年創業。
戦時中に一時休業をはさみながらも、長きにわたって広島・呉の地で、
“納得のいく味”を探求し続けてきた吟醸蔵。

「雨上がりの空に、冴え冴えと光り輝く月がまわりを明るく照らすように──」
そんな澄みきった酒をつくりたいという想いから、「雨後の月」と名付けられたのだそう。

私がこのにごり梅酒に感じたのは、
“うっすら靄のかかった空に、やわらかくにじむような月明かり”。
何しろ「濁り」だからね。
今度は、特別純米酒なども飲んでみたいと思います。

このにごり梅酒には、ベースとして純米酒が使われ、
梅には香り高い和歌山県産の完熟南高梅を使用。

すべて手摘みで収穫されているため、量産が難しく、本数も限定的とのこと。

▶︎ 詳しくは 相原酒造 公式サイト へ。