日本からまとめ買いしていた日本酒のストックも、とうとう底をつきました。
もうすぐ夫が日本へ行く予定なので、それまでの我慢。我慢。我慢…。
……無理。
餃子の材料を買いながら、頭の中はすでに「餃子と日本酒」のペアリングでいっぱい。
「日本の3倍もするなんて…」と一度は諦めかけたけれど、
「洋服も化粧品もあまり買わないし、日本酒くらい、いいよね。」
そんな都合のいい言い訳をそっと胸に、ネットで日本酒を探しました。
選択肢は多くなかったけれど、生酛造りの『初孫』に出会い、迷わずポチッ。
この「初孫」に失礼のないよう、餃子もいつもより丁寧に包みました。
写真は撮り忘れましたが、餃子のタレには、木桶仕込み・天然熟成2年の松本醤油商店の
「はつかり醤油」を使用。
江戸時代から続く蔵で、木桶と共に育った優しい旨味のあるお醤油です。
まずは、とっくりに一合。ゆっくりと注いで、念願のひと口。
初めて飲む日本酒の最初のひと口は、ほんの少しの緊張と、たっぷりの幸せを伴います。
「どんな味なんだろう」という高揚感とともに口に含むと、
やわらかくて、旨みがあって、すうっと染み込んでくるような味。
クセがなく、それでいて奥行きがある。
誰もが「美味しい」と素直に言いたくなるような、そんなやさしいお酒でした。
熱々の餃子からあふれる肉汁と、はつかり醤油のまろやかさが重なって、
この一杯をさらに特別なものにしてくれます。
生酛の日本酒を飲むときは、その背景ごと感じたくなります。
長い時間と手間をかけて、丁寧に仕込まれる生酛造りの酒。
だからこそ、こちらも感謝の気持ちと落ち着いた気持ちで向き合いたくなるのです。
「どうしてこの名前をつけたのだろう?」
「どんな思いでこのお酒を醸したのかな?」
そんなふうに思いを馳せながら、ゆっくり味わう時間が好きです。
「初孫」——
その名前にふさわしい日本酒でした。
我が家の長男が生後3ヶ月で初めて両親に会った日のことを、ふと思い出しました。
海外在住のため、首がすわるのを待ってからの初帰国。
長時間のフライトを経て実家のインターホンを鳴らすと、
玄関ドアの向こうで両親が嬉しくて泣きそうな顔で手を伸ばしてくれた、あの瞬間。
「初孫」——
誰かの笑顔と、温かい記憶を呼び起こすお酒かもしれません。
味わうたびに、心がゆるんで整っていくような、
やさしくて、まっすぐな日本酒でした。